春夏秋冬特別企画ロングインタビュー
島の釣り人に聞く!

濱口一人さん
-PartⅦ-


---プロフィール---
濱口一人(はまぐちかずひと)さん

1957年大島生まれ。18歳頃から本格的に大島での磯釣を始める。イシダイ釣りを皮切りに、様々なターゲットに目標を定めクリアを果たしていく。磯からのルアー釣りで61㎏のクロマグロを釣り上げたことで知らないものはいないほどの大島屈指の釣り人である。
(株)濱口建設社長。現在の目標は船釣りで300㎏超のマグロを釣り上げること。

思いつくままに~それぞれの魚について

――そうですか、そんな資料館があったんですね。役場かなんかに聞けばわかりますかね?
どうかなぁー、もう何十年も前だからなー。カンダイとか、デッカイ魚の魚拓なんかがあったんだけどな。でも、大島ではイシダイで7㎏超えっていうのは、何尾もいないでしょ?8㎏台っていうのは出てないでしょ?大島では。

――確か、7㎏台っていうのが大島の記録になっているはずです。でも、メジナのデッカイやつの写真とかがないんですよね。
メジナは俺も3㎏台までしかいってないからな。3.5㎏までだったな、4㎏は超えなかったね。

――4㎏っていうと、あぁ、でもササヨの方が体高はあるんですかね?
あるね。ササヨの方が。

――ササヨも、60㎝を超えると4㎏ぐらいありますからね。
うん。

――店に飾ってあったのが63㎝・3.75㎏のオナガの魚拓ですからね。
ササヨだとねぇ、60㎝台で6㎏クラスのもあったよ。個体によって違うんだろうけど、60何センチで6㎏超えていたね。
ササヨ
ササヨ

――ササヨは外道で釣れたってことですよね?
そう、そう、メジナをやっていてね。

――四国のメジナ釣りの有名な場所は、シーズンには毎日のようにオキアミがそれこそトンの単位で入れられているからか、養殖状態でメジナもすごく太っているみたいですからね。それこそ、60㎝あれば4キロを軽く超えるような感じみたいです。丸々と太っていて、私が知っているオナガのイメージじゃないですね。
タイやっていても、まぁ、タイやり始めて1年ぐらいだけど、マグロやっていてあんまり気配がない時にやるぐらいなんだけど、やっぱり1㎏半、50㎝ぐらいがメインだね。40㎝ないのは全部逃がしちゃうけど。デカいのだけ持って来て卸しちゃうけど。

――タイもマグロと違って、あんまり大きいのは美味くないですよね?
うん、この間も6㎏のやつを釣ってきたけど美味くないよ。

――何でですかね?
3㎏までだね。

――マグロはデカくても、デカくなくても美味いですけど、不思議ですよね?
もう4㎏でダメでしょ、タイは。3㎏までは甘みもあるけどね。

――マグロはご自分で捌いたんですよね?
捌いた。全部捌くのに3日掛かったね。サクにして何十軒かに配り歩いた。

――美味しかったですよね、あれは。
あげたよね、確か。

――いただきました。(笑)
結構イケたよね?

――美味しかったです。やっぱマグロは美味いって思いました。
ホント、3日掛かりだった。(笑)

――そういえば、モロコはやらなかったんですか?
やった!モロコもやった!

――やっぱり、やったんですか。(笑)
やって、ひどい目にあって、やめた。(笑)

平床
千波崎・平床
――エッ?それはどういうことがあったんですか?(笑)
あの、ヒラトコで。竿がないからさぁ、まだ二十幾つでやり始めのころ聞きかじりでロープにエサ付けてさぁー(笑)

――エ、えっー?ロープでやったんですか?
そう、ロープにエサを付けて、サバを付けて投げて後ろで二人で寝ていて、(笑)それで竹、青竹を持って来て磯の先っぽに、喰うと折れて音でわかるから、昔はこうやってやったんだって。そうしたら、とんでもない。喰ってさ、二進も三進もいかなくてさ(笑)二人でゴリゴリ、ほら、竿じゃないからさ引っ張り合いになっちゃってさ、(笑)

――綱引きになっちゃったんですね?(笑)
そう、(笑)綱引きになっちゃってゴリゴリやって、切れちゃって。(笑)だから、モロコだかサメだかわかんないんだけど。それで、悔しいって今度はオヤジのモロコ竿を持ってったら、道具ごと持っていかれて(笑)折れて。石突きを岩の間に入れてやっていたの、そうしたら喰ったぞってなって竿先が曲がったと思ったらそのままグチャーってなって、(笑)石突きのところから折れちゃってそのまま全部すっ飛んでっちゃった。(笑)それっからやんない!

――(笑)それは幾つぐらいのとき?
だから、24歳ぐらい。島に戻って来てすぐ。話を聞いて。こりゃあ、面白くもなんもねぇーやって、(笑)ただ力がありゃ何とかなるじゃねぇかって。(笑)

――(笑)そうですか。ヒラトコにはモロコの巣があるっていいますよね。
うん。それを聞いてさ、二人で交代でエサ撒きに行ってさ、魚屋まわりしてさ。一週間ぐらいコマセ撒いてさ。

――アラを撒いてってことですか。モロコは夏の魚ですよね?
俺らがやったのは秋口だったかな?一週間のうちに、二度喰ってきたね。

――あれですよね、ちゃんとコマセを一週間なら一週間、十日なら十日きちんと撒けば、モロコは釣れない魚じゃないって言いますよね。

うん。やっぱり、均等に撒く、そういうのが大事みたい。

――それで話は変わりますが、先ほど、ヒラマサとかは足下でデカくなればデカいほど喰って来るってお話しされていましたよね?
うん。うん。

――それで、ワラサ・ブリはある程度遠くだけど

遠くっていってもそんな遠くじゃないけどね。カンパチもそう。

――カンパチも足下?
うん。

――それは、何でですかね?
わかんない!(笑)

――(笑)
追っかけて来て、土壇場で喰うみたい。デカけりゃ、デカいほど。それで、カンパチは8㎏までしか上げたことがないの。それ以上のおそらくカンパチだっていうのは、何度も掛けているんだけど獲れない。カンパチだけは磯じゃ、8㎏が限界だったね。

――それは、何でですか?
根ズレで。磯際に沿って突っ込むんだよね。竿一本分ワイヤー取って、投げて喰わせたけどそれでも獲れなかった。ワイヤーの上がスレて。ヒラマサも同じような動きをするんだけど、強引に糸を出さないでやればこっちに顔が向くんだけど、カンパチだけはこっち向かない。8㎏が精一杯。それ以上になると、いくらやっても向かない。そうすると、ラインがスレて切れるんだよね。

――磯際で喰って、沖に走るわけじゃないんですよね?
沖じゃなく、根に沿ってこびり付くような感じで。ヒラマサもそうだけど、カンパチほどひどくない。ちょっと離れていくから。糸を出さなきゃそんなに心配ないけど、糸を出すと好きなとこへ行っちゃうから。

――それが微妙な線なんですよね。
マグロだと、今度は糸を出さなきゃダメだから。時々、ドラグを締めっぱなしにしていて、それでバチーンて切られちゃって。駆け引きが。

長年の謎がやっと解けた!!

――私は、過去に磯でメジナ釣りをしていて、まぁ、大した長さじゃないですけど150mぐらいの糸をそれこそ、一瞬にして全部持って行かれたことが3回ぐらいあるんですけど。(笑)
あぁ、マグロだ。それは。

――それで、一番不思議だったのは、その日は何にも喰わなかったんですよ。メジナどころか、何にも喰わなくて。しょうがないからって、フカセで使うにはデカいウキに変えて延々と流したんですよ。そうしたら、7~80mぐらいラインが出たところぐらいでスーって沈んだんですよ。それで合わせたら、グーンって走ったんですよ。アっ!こりゃダメだって思ったら、フッといきなり軽くなったんですよ。なんだ、やっぱりバレちゃったかってがっかりしながら仕掛けを回収しようとしてリールを巻いていたんですよ。そしたら、バレていたんじゃなくて、地の方に向かって突進していたんですね。いきなり、後ろに引っ張られる形になって。エーって思って振り返ったら、それこそゴロタの岩と岩の間に突っ込んでいるみたいで、二、三歩引きずられるような感じになったと思ったら切れて、ウキがこっちに向かって飛んできたみたいになって。
マグロ!(笑)マグロ!(笑)

――マグロなんですかねぇ?オッドロいて、足がガクガク震えましたね。
岩の中に突っ込む!

――そう、アっ、マグロなんだ!
行って、ダメだっていうか、方向転換する。いきなり。アーって思って軽くなると、次の瞬間に横にビューっと。

――それで、こんな感じになったんですよ。
そうそうそう。マグロ!間違いない!何回もある。俺らは、道具が太いからそこから獲れるけど。

――地に向かって突進するなんて思わないからぁー。
地の湾の中に入っちゃったり。

――ゴロタに突っ込んでいる感じなんですよ。
そうそうそう。何回もある。マグロ。だから、二つ根の周りを回られちゃったり。それで切られちゃう。

――そうか、マグロなんだ!
マグロ!

――ヒラマサとかカンパチは、そういう動きはしない?
しない、絶対にしない、しない。今まで何度もそれこそ百単位で掛けているけど、ヒラマサなんかそういう動きじゃない。磯のスプリンターなんて言われているけど、とんでもない。マグロだけ、そういう走り方をするのは。一気にギューンギューンとかって。ヒラマサとかカンパチって、グングングーンって感じで距離は動かない。力は強く、グングングーンって行くけど。距離はそんなに動かないから。それに、沖に出ないから。ヒラマサもカンパチも、沖に出るやつなんていないから。絶対、根の際をこう走るから。

――こういう下を、際沿いに走るっていうことですか?
そうそうそう。

――そうか、なるほど!
まぁ、カツオとかもいるから、わかんないけど。でも、カツオの走りとも違うから。カツオはもう、沖でこういう感じで動くからな。

――いやー、あんなゴロタに突っ込んでいったから、何だったんだろうってそれだけはわからなかったんですよね。

いやー、マグロ、マグロ!信じらんないよ。

――誰もそういう経験したことがないみたいだから、誰に聞いても、いやー、わからんなー、ヒラマサかな?ーで終わって。マグロですか!?

マグロ、マグロ。俺なんて、ジナエの真珠池とかっていうあっちの湾の中に入っちゃったから。生餌でやっていたからウキでわかるんだけど、しょうがないから糸を出したんだよ。そうしたら今度は沖へ(笑)。それで巻いてきたら、マグロ。そんなことが何回もある。

――本当にあの感覚は忘れられないですよ。

ルアーでもそうだよ。こいつのときもそう。ギーッて糸が出ていきなりスカントなって軽くなって、糸回収ってガーって巻いてきて、その繰り返し。だから、ラッキーだったの。何回も同じ沖へ出たから。横へ行かなかったから。直線のやり取りだったから、ホントに運が良くて獲れたって感じ。

――まあー、でも運だけじゃ獲れないなこれは。
(笑)

メジナ釣りのアドバイス

メジナ
メジナ
――それでは、メジナ釣りで何かコツとかありますか?
俺がやっていたメジナ釣りは今のとは全然違うからさ、もっと大胆な釣り方だから(笑)メジナでは場所は説明できるけど、今の道具は逆によくわかんない?なんとなくはわかるけど、ゼロウキで沈めたりとか昔でいえば水中ウキで潮をつかませて沈めたりたりとかあったけど、そんなことしなくても釣れたからね。

――そうか、(笑)
メジナ釣りは今のやり方は説明できないね。ただ、魚がいるっていうことだけは間違いない。

――釣れないことはない!っていうことですよね。
絶対ないね、あんだけいるんだから。メジナが沖にいるわけじゃないから、いくらオナガだっていってもね。潮目にたむろしているから。魚探で見ていてもそうだから。潮目のあるところで、必ず下の方でじっとしているから。

――じゃあ、結構深いところにいるんですか?
5~60mぐらいのところ。

――そうなんだ!
タイをだいたい50~60mを目安にやるんだけど、だいたいそこでメジナも喰ってくる。オナガもクチブトも喰ってくる。

――ホントに結構深いところにいるんですね。
いるいる。全然廻んないわけじゃないみたいだけどね。この間なんか、メダイが50mで喰ってきたから。

――50mで、メダイが?!
この間何尾も釣ってきた。(笑)シマアジと間違うんだって。引きも似ているし。グングン、グングン、グングンって感じで浮いてくるから、やったシマアジだって思ってさ(笑)それで上がって来ると色も同じようだから、(笑)

――私も良く勘違いします、願望のなせる業かもしれませんが(笑)
それで、デカい夢見ちゃうと、なんだヌルヌルじゃんかってことになって。(笑)

*丸市コメント*
大島に野生化した熊がいたなんて言う話も初めて聞きました。当時の人は、さぞ怖かったことでしょうね。
それにしても、モロコ釣りの失敗談には、失礼ながら大笑いしてしまいました。以前、テレビで八丈島での伝統的な釣りを紹介していたのを観たことがあります。その釣り方も竿とリールを使わずに、ロープとウキを使って魚を釣るというものでした。ただし、モロコではなく確かブダイを釣るというものでした。
大島で、島ウキを使ってハンバをエサにしてブダイを釣る方法があります。その釣り方の中から、竿がロープに変わっているという感じの方法でした。これなら、喰ってくる魚は限定されます。だから、納得できる方法です。
しかし、モロコはマズイでしょう?!(笑)文字通りの綱引きになってしまいます。こんなに危ない釣りがあったということも、驚きでした。私は絶対やりません!
また、長年の謎が解けてスッキリしました。マグロがゴロタに突っ込むということや、急激に方向転換すること。濱口さんの経験談からあの時の魚がマグロだったということを確信することができました。おかげでノドに刺さった小骨が取れたようなさわやかな気分です。ありがとうございます。