春夏秋冬特別企画ロングインタビュー
島の釣り人に聞く!

濱口一人さん
-PartⅤ-


---プロフィール---
濱口一人(はまぐちかずひと)さん

1957年大島生まれ。18歳頃から本格的に大島での磯釣を始める。イシダイ釣りを皮切りに、様々なターゲットに目標を定めクリアを果たしていく。磯からのルアー釣りで61㎏のクロマグロを釣り上げたことで知らないものはいないほどの大島屈指の釣り人である。
(株)濱口建設社長。現在の目標は船釣りで300㎏超のマグロを釣り上げること。

マグロ以後の話

――それで、この61㎏のマグロを磯で釣ってからは船に乗るようになったんですか?
そうそうそう。もう、陸からは無理。(笑)

――それは腰が?

腰がもうこれ(61㎏のマグロ)のときに、腰がもうこわれちゃって。これから1年ぐらいはダメだったんじゃないかな、磯を歩けなかったんじゃないかな。

――そうだったんですか。

1年ぐらい腰にきちゃって、磯の上は足が震えちゃって。それでなんとかしようって、釣りはしたいけど磯には行けないって、じゃ、船にしようって。いきなり免許取って。(笑)

――エッ!持ってなかったんですか?

持ってない、持ってない。

――何級を取られたんですか?

1級船舶。

――いきなり取れるんでしたっけ、1級船舶って?

いきなり取れる。

――1級を持っていると、向こう(本土)まで渡れるんでしたっけ?

渡れる、渡れる。2級だとちょっと足りないの。そうか、そうすると2年ぐらい釣りをやってなかったんだな。免許を取ったのが2010年だから。

――船だと休みの日だけですか?

朝も行ったりするよ。船ではいっぱい釣ってきている。ただ、目標の200㎏、300㎏のマグロには、なかなかたどり着かない。喰わせることは何回かあったけど、もう全然二進も三進も行かずに切られちゃったりとかして。まだ、技術的に。やっと、道具も揃ってきたから。

①61kgのマグロ

――じゃ、免許を取ってすぐに船も造ったんですか?

2010年の5月か6月に取って、10月に船を造って。一杯目の船を10月に造って、それですぐにブッ壊して、壊しちゃって。それで次の年の6月に二杯目の船を結構金を使って造って、それが今のやつ。

――だって、船外機じゃないでしょ?

一応、船外機だよ。馬力は200ぐらいあるけど。ジェット船よりちょっとスピードが出ないぐらいかな。

――何人ぐらい乗れるんですか?

定員は6人。水洗トイレもついている。

――一つ目の船は何で壊れちゃったんですか?

スピード出しすぎて、出しすぎちゃって。(笑)

――(笑)いじめすぎちゃったんですね?!それで船を新しく造って、その船には魚を巻き上げるウィンチみたいなものは付けているんですか?

リールで、電動リールを使っている。結構、これもするんだよな。さらに竿を含めると。

――それじゃ、松方弘樹バリってことですか?

彼のより上いっているんじゃないかな?

――より、上をいっているんですか?!(笑)。最後は電気ショッカーですか?

電気ショッカーも、二台ついている。

――も、ついているんだ(笑)。もう、趣味じゃないですよね、はっきり言ってね(笑)

(笑)

――濱口さんとしては、磯で出来るなら磯でやりたいっていう気持ちですか?

うん。磯でやりたいっていうのが本音だね。ただ、目標をことごとくクリアしてきているからね。それ以上の目標を狙っても、限界っていう感じだよね。なんか、そういうものに向かっていきたいタイプだからね。

――だって、マグロはもう絶対にこれ以上のものは陸(おか)からは無理でしょうね、どう考えてもねぇー。

俺も絶対無理だと思う。運が良く獲れた(笑)絶対、運が良くて獲れたと思う。

②15kgのマグロ、濱口ノットの威力炸裂

――運、運、いや、もちろん運もあるでしょうけど、やっぱ執念でしょうね、濱口さんのねぇー。なんで、何でそこまで情熱を傾けられんですかね?(笑)

(笑)わかんねぇよー、(笑)。ただ、これって向くと、向くんだよね(笑)

――それはもう、もともとの性格?

う~ん、そうだね。だから、人がシマアジやっていても、他の人が例えば5㎏ぐらいのをボンボン釣っていても、自分はもっと太い仕掛けでやっているから喰わないじゃない。喰わなくても納得する、俺はこっちを狙っているんだよって。

――なるほどねぇー。

だから、狙って、偶然で獲りたくないのよ、狙って獲りたいのよ。わかる?偶然もあるんだけど、一応は狙って獲りたいっていうのが、本音だよね。

――釣れちゃったってこともありますからね。メジナを狙いに行っていて、マダイが釣れちゃったりとか、イシダイが釣れちゃったりとかじゃないですもんね。やっぱり、マダイを狙いに行って釣れなかったっていうのと、マダイを狙いに行って釣ったっていうのとでは全然意味が違いますもんね、、、。濱口さんにとって、磯釣りってなんなんですかね?

ロマンだね、一口に言ってロマンだね!

③25㎏のマグロ

――ロマン!

今は、体のことを考えて船で釣りをしているけどね。

――ご自分で、何でこんなにハマったかっていう、明確な理由ってありますか?こんなにハマったっていう理由は?

なんていうんだろう、何とも言えない達成感!山登りの人も同じだと思うんだけど。狙って、だから狙って釣りたいってとこなんだけど、偶然じゃなくて。狙って釣ったぞってみたいな。あの、興奮するのがさ、頂点に達すると、もう、わけわかんなくなってさ(笑)

――最初は、イシダイとかブダイから始まったっておっしゃいましたけど

それは、あくまで全磯連の関係で、大会なんかで釣っていたっていう、オヤジの関係でね。それからだんだん自分でこういう魚がいるんだ、ああいう魚もいるんだってなっていったんだよね。そのうち、イシダイ釣りの人には申し訳ないけどイシダイ釣りほど不合理な釣りはないなって思い始めて(笑)食ってもあまり美味くないし、俺はもともと魚好きじゃないないし、

――あまり食べられないんですか?

魚あんまりねぇー、全然じゃないけど、ほとんどくれちゃったり売っちゃったりしてね。

――そこは○○○○○ですね、あんまり大きな○○じゃ、、、。(笑)

*丸市コメント*
これ以降は、しばらく内緒話が続きました。内容はご想像にお任せいたします。
それにしても、61㎏のマグロ以降は磯に立てなくなったというのは、悔しいだろうなって気がします。できれば磯釣りをしたいっていう気持ちがあるのだから、なおさらだろう。でも、濱口さんも言う通り、磯からの目標は殆んどクリアをしているわけだし、やり尽したという思いもあるはずだ。そうなるとやはり今後は、船からの目標を達成するのを期待して待っているしかない。楽しみにしています。


濱口さんの釣りにおけるエピソード

――それでは、ブダイとかは結構釣ったんですか?
釣った、釣った。やった、やった。

――それは、どういう釣り方だったんですか?

自分らは島ウキとかは使わなかったから、カニエサのぶっこみか、ウキ。カニのウキ釣り仕掛け。

――ブダイの塩干しは結構値が張って、人気もありますよね。

ブダイは好きだったね。塩干しは食べたね。

――あれは美味しいですよね。この釣ったオオカミはどうされたんですか?

これはねぇ、自分たちで食べたけど正直あんまり美味しくなかったね。脂が多すぎてね。刺身にすると、皿の真ん中に脂がたまるんだもん、温かくなると。(笑)シマアジは、5~6㎏までなら美味いけどね。

――シマアジは美味いですよね。

でも、10㎏ぐらいになると味が落ちるよね。珍しいかなっていうことでみんなにも配ったけど。

――3~4㎏が一番美味しいところでしょうね。それでは、釣りにおける失敗談とか、面白いお話はありますか?

やっぱり一番の失敗談というか、悔しかったのは目の前でマグロをサメに喰われたことだよね、(笑)失敗談と言っていいのかどうかわからないけど。

――サメが喰ったっていうのは最初からわかっていたんですか?

いや、初めわかんなかった。何だろうって思って。血ってさあ、赤じゃないんだよね、緑なの。マグロとやり取りしていて、水面近くでぐるぐる回っていたのが、突然潜っていったんだよね。そしたらガクッーンって急に軽くなったと思ったら、次に水面が緑色の煙幕みたいに変わっていったんだよね。何だろうって思いながら、リールを巻いてきたら頭が見えてきたのね。その頭の喰われたところの血は赤いんだけど、水面のは緑なんだよね。

――そうなんですか。

それ見たときに、なんだこりゃーって、あの悔しさ!!(笑)

――喰わせたのは二つ根寄りで、やり取りしていたのはコンクリ場ですか?

そう、それでサメに喰われたの。それから一週間も経たないかな、二つ根側で今度はルアーで喰わせて、頭だけ残ったやつと同じぐらいのやつだったけど、何とか獲れると思ったらサラシの下からドーンとサメに喰われて、全部持って行かれた。(笑)最初のやつは真後ろから喰われているけど、今度は横から喰われたんだよね。デッカイ口だった、人間も飲み込まれるぐらいの。

――僕も岡田の漁師さんにメダイ釣りに連れて行ってもらった時に、船の横幅を優に超える大きさのサメに囲まれたことがありましたけど、(笑)生きた心地がしなかったですよね。船長さんが、おかしい、変だっていっていたんですけど、僕はメダイが釣れていたので良くわからなかったんですけど、船長さんはメダイを上げてくる途中で喰われていたんで異変に気が付いたらしいんです。で、気が付いたらデッカイサメ3尾に取り囲まれる感じになっていて、慌ててその場から逃げたんですけどね。(笑)


――では、大島でお薦めの釣り場を教えていただけますか。

お薦めは隠さずにいうけど、ほら、前にも言ったけどあそこだよね、オオブノーの鼻だよね。

――あそこは、干潮じゃないと上がれないですよね?

大潮のときはダメかもしんない。大潮以外だったら渡れる。

――どういう理由でお薦めですか?

やっぱり荒らされてない。魚が違うんだよね、大きさも違うし、数もいるしね。ただ、ともかく年がら年中は入れないでしょ。誰に聞いてもあそこが一番じゃないかな。潮の当たり方が違うから、青物でも上物でも。マグロも出るし。俺はないけど、マグロをルアーで喰わせた人もいるし。Yさんが釣っているからね。あの人も赤岩でマグロを良く釣っていたよ。

*丸市コメント*
以前、雑誌の企画でお薦めの釣り場をお聞きしたことがあった。そのときにも、オオブノーの鼻を挙げていただいたのだが、潮廻りを注意しないと上がったは良いけど、帰れなくなってしまう場所でもあり、公開することを控えた経緯がある。
実際に私はまだ初心者の頃、そうした失敗をしたこともあって公開を控える判断をした。そのため、今回も名称だけに留めさせていただきます。それでも挑戦をする方は、十分に注意をしていただきたいと思います。




――今でも狙おうと思えば、マグロは狙えますかね?赤岩で。

出る出る、出る出る。出るよ!

――俺なんか、でも、掛かっちゃったら怖いよな(笑)

出るよ。ただ、あのー、すごく難しいのはね、マグロの場合はドラグをしっかり調整して糸が出るようにしておかないと、真っ向勝負なんてしたら竿が折れるか、リールが折れるかするからね。飛んでいっちゃうからね。俺は2回、リールが付け根のとこから捻じれて折っているからね。

――リールの足が折れちゃう?

足が折れる。2回、マグロを掛けて。

――すごいことですよね、それって。

でも、絶対獲れる、まだいるよ、全然、獲れるよ。赤岩の二つ根寄りは。まぁ、水温にもよるけどね。

――どのくらいの水温なら釣れるんでしょうか?

やっぱり20℃が基準だよね。18℃でも喰うけど。それなりの潮回りのときなら喰って来るけど、やっぱり18~20℃以上超えないと。何の魚でもそうだけど、大島の魚ならそうだと思うけど、シマアジ以外は。シマアジは17℃ぐらいが一番良いけど。

――それでは、シマアジ釣りとマグロ釣りといったら、マグロ釣りの方が魅力的なんでしょうか?(笑)

さぁー、どっちもだなぁー。(笑)シマアジのあの神秘的な釣りも魅力的だしー。どっちもどっちかもなぁー。自分としてはどっちも頂点に行ったと思っているから。(笑)どっちがって言われても、両方ともだねぇー。他にはないねぇー。ヒラマサ釣りがどうのこうのとも思わないし。

――じゃあ、シマアジ釣りの魅力っていうと、その神秘的なっていうところなんでしょうか?

神秘的な、その何でこういう喰い方をするんだっていう、喰い方をするんだよね。

――その、順番にスーッ、スーッてやって行くっていうのは、一尾がやっていくんですかね?

だと、思うんだよね。それも、スッ、スッじゃないからね。スーッ、スーッってやってアってやって、いつもなら次の瞬間ゴーンと入るのが、スーッ、といって、スーッって止まって。またそれが隣で始まって、それで終わっちゃうときもあるし、最後の人にゴーンと、入っちゃったりさ。(笑)

――それは付けエサだけ盗っていくっていうことなんですかねぇ?

付けエサは盗んない。

――盗んないんだ!?

そういう時は盗んないの。盗ったらエサ盗りなの。吸ったり吐いたりするみたい。それで、吸った時に竿がスーってなるみたい。コイみたいな喰い方をするみたい。

――じゃ、それはイタズラしているってことなの?

イタズラしているんだと思うんだよね、こりゃあ、不味いや!っとかそんな感じで。

――(笑)

だから、スーッ、スーッてなってエサがなかったら、それはエサ盗りなの。シマアジのときはエサは絶対って言って良いぐらいに残っているから。だからみんな、オーって言ってびっくりして竿を上げて、エサを見るのね。それで、エサがそっくりそのまま残っていたら、それはシマアジ。

――なるほどねぇー。

シマアジが廻って来ているの。だから、大概その1~2分の間に次、喰って来る。だからみんな泡くって。(笑)

――シマアジのデカいのを今でも釣ろうと思えば釣れますかねぇ?

それはねぇ、コマセを均等に入れていないと、シマアジの場合は。昔はもうみんな入れていたからねぇ。それで俺も話しをしたように、何百、何千㎏っていう感じで、トンの単位でコマセを入れていたから。毎日、何十㎏って入れていたから。だからシマアジも寄って来ていたわけだから。今の人はケチ臭いからコマセをいかに使わない、ルアー釣りはコマセを使わないから良いやみたいな。デカいのを釣ろうっていうんじゃなくて、魚が釣れれば良いやっていう感じでルアー釣りをやっているけど。今、コマセをシマアジのために大量に撒こうっていう人がいないじゃない、Kさんが亡くなってからは。彼が生きていた頃は釣れていたもん。毎日のようにコマセを撒いていたから。

――彼は夜までやっていましたからね。
だから、そういうのがないから、まして黒潮が離れちゃっているから、余計釣れなくなるよね。だと思う。だって、船では、鵜の根や千波周りでシマアジ出ているからね。3㎏、4㎏ってやつがね。俺じゃないけどね。

*丸市コメント*
シマアジ釣りの神秘的な魅力。私が大島に来てまだ間もないころ、濱口さんが熱く語ってくれたことがあった。シマアジの頭の良さと、釣り人をからかっているかのようにイタズラしていく話が強く印象に残っている。
コマセを毎日のように入れる釣り人がいなくなったことが、シマアジが釣れなくなったことの一因だという話は首肯することができる。やはり、本命を釣り上げるのにはそれなりの裏付けがあってこそのことだということを、改めて知らされた気がする。
また、振り返って考えれば、濱口さん達のようにシマアジ釣りのためにコマセを大量に撒く釣り人がいなくなったことによって、他の魚種も以前のように釣れなくなっていることも理解できる気がした。
メジナ釣りを始めた頃によく言われていたのが、コマセの切れ目が縁の切れ目!という言葉だ。コマセの果たす役割をこれほど簡潔に言い表した言葉はないだろう。シマアジ釣りから類推するなら、メジナ釣りにおいても釣果を上げるためには、同じ釣り場に通ってコマセを均等に効かせることが重要だということもできるだろう。釣果を上げるためのヒントに気付かされる話であった。