春夏秋冬特別企画ロングインタビュー
島の釣り人に聞く!

濱口一人さん
-PartⅣ-


---プロフィール---
濱口一人(はまぐちかずひと)さん

1957年大島生まれ。18歳頃から本格的に大島での磯釣を始める。イシダイ釣りを皮切りに、様々なターゲットに目標を定めクリアを果たしていく。磯からのルアー釣りで61㎏のクロマグロを釣り上げたことで知らないものはいないほどの大島屈指の釣り人である。
(株)濱口建設社長。現在の目標は船釣りで300㎏超のマグロを釣り上げること。

マグロ釣りについて

それで、友達が大島に来て、大島もルアーでやれば喰うんじゃないっていわれて、何個かルアーをもらって、やって何日もしないうちにマグロに出遭ったんだよね。誰も信じなかったけど。

――そのルアーっていうのはミノーですよね?

最初のときはそう、ミノーだった。貰ったやつがミノーだったから。

――ルアー釣りを始めたのはお幾つからですか?

このオオカミを釣った翌年ぐらいからじゃないか。

――そうすると、2001年からということですね。

それで、2003年にマグロに出遭って、その頃丸市さんもいたんじゃなかったっけ?いたようなきがするなぁー。マグロ釣ったっていっても信用しなかったと思うけど。

――こっちのマグロじゃないでしょ?

 *魚拓のマグロを指して聞いた。

これじゃない。その前。これはもう少し後だけど。二つ根に向かってルアーをやっていたら、バシャ、バシャってトビが飛んだりしてさナブラがたっていたの。それで、続けてルアーを投げていたら、マグロがボーンて跳ねたの。明らかにマグロだってのが。それで、ボーン、ボーンて跳ねていたから、また、ルアーを投げていたらそのうちにドーンと目の前で跳ねたの。そうしたら、それが俺のルアーを喰っていて。マグロ、確実にマグロ。飛んでいるんだこうやって。それで、左へ、左へ行かれてブッチ切られて、よし!俺はあれを釣ろう!(笑)ってなって。

――それでその気になったんだ。(笑)

それを人に話したら、お前は『バカ』かっていわれて。(笑)二つ根にマグロがいるわけがないだろうって。それを、確か丸市さんに言ったと思うよ。


――マグロは、私もイシダイを狙っていた時に何度か見ているんですよ。ちょうど道糸が海面に入る辺りですから、それこそ目の前をいきなりナブラが湧き上がってマグロが何尾か跳ね上がって、明らかにマグロなんですよ。そういうのを見ているので、いるなぁーとは思っていたけど、あんなのが掛かったら怖くてしょうがないなっていう感覚でしかなかったですよね。以前、常連のお客さんから八丈島だったと思いますが、ヒラマサ釣りの話を聞いたことがあって、ヒラマサでさえ海に引き込まれる気がしたっていっていましたから、とてもじゃないけどマグロを相手にしたいとは思いませんでしたね。まぁ、一度ぐらいは掛けてみたい、喰わせてみたいとは思いますけど、釣り上げたいっていう感覚にはならなかったですね。
話を戻しますが、そうするとルアー釣りを始めてすぐにマグロに出遭ったわけですか?

そう。すぐに掛かった。だいたい年度末は釣りをできないから、シマアジはそういう感じで納得して、次に何を狙おうかって考えていた時にそういう経験して、それでやるようになったんだよね。ルアー釣りではだいたい二、三ヶ月で200㎏とか300㎏とか釣るんだよ。ヒラマサ、カンパチ、ブリとか、ものすごい量。Kさんが信じなかったけど。言ったら、そんなに釣れるんだったら毎日持って来いよって、見せろよっていわれて。それじゃってんで、釣れるたんびにクラクション鳴らして、こうやって持ち上げて見せて。(笑)ウソだろーお前ー。大島にそんなに魚がいるわけないじゃないか!(笑)って。いや、ルアーでやれば釣れるんだってばって。(笑)

――それらを釣ったのも全部ミノーですか?

その頃は凝っていたから色々とトップだとかペンシルだとか何が良いか?って使ったけど、ジグだけはやんなかった。

――ジグではなくって、魚の形をしたいわゆるミノーってやつですよね。

そうそう。

――最初はどういう道具でやっていたんですか?

最初は大した道具じゃなくて、PEの4号ぐらいでイシダイ竿でやっていた。

――イシダイ竿ですか。

最初は柔らかい竿でやっていたんだけど、4号か5号ぐらいで。磯竿で。取り込みが楽だと思って。ただ、ルアーの世界だと一気に引っ張られるんで、すぐに折れちゃうんだよね。磯竿の4号、5号の竿は。すぐに折れるんだよね。何でかっていうと、足元で喰ってくることが多いから、竿先に負荷が掛かりすぎて簡単に折れるんだよね、ウソみたいに。それで段々太くなっていって、イシダイ竿まで行ったんだよね。でも、イシダイ竿も重たいしなって。それで、GT竿とかも使うようになって。

――リールはもちろんスピニングですよね?

リールは最初からスピニング。ソルティガを使っていた。


①魚を喰わせるまでは短く収まっている、濱口ノット

②アワセを入れると伸びるのが特長の、濱口ノット

――ルアー釣りで一番肝になるのがリーダーとメインラインとの結束にあると思うんですが、それはどういうやり方を使われていたんですか?

もうね、ラインじか。PEの15号ぐらいを一ヒロぐらいとって、それをPE6号ぐらいのメインラインに結んで。PEの4号でブッチ切られて、ブッチ切られて、ウソだろーってぐらいに切られていたから。いきなりそうなったんじゃなくて、最初はビミニツイストとか色々試していたけど切られたり外れたりしてうまくいかなくて、一年ぐらい。それで頭使うようになって、何でショックリーダーって必要なんだろうって考えたりして、擦れるからだろうなってなって、じゃあ、太めのPEを結んだらどうだろってなって。

――ナイロンとかフロロのリーダーじゃなくて、太いPEを結んだってことですか?

うん、うん。

――それはどうやって結んだんですか?

何?電車結びっていうの?あれで。

――エッ!それで結んで大丈夫だったんだ?!

全然、ぜんぜん平気!

――へぇーー!それはスゴイなぁー!エッ、その話って世間に出回っている話ですか?

出回ってないんじゃないか?!

――出回ってないですよね!あー、そうなんだ!

もう、出回してもいいけどね。もっと凄いのは、ハリの結び方を見せたっけ?

――いや、見せていただいてないですけど。

これ取ったときの、特殊なハリの結び方で。

――エッ、ルアーについているハリじゃなくてっていうことですか?

シングルで。

――シングルなんですか。

シングルしか使わないよ。トレブルは外れるから。

 *濱口さんはそういって、ハリを結んだルアーを探して持って来てくれた。

これは今、船で使っている道具だからショックリーダーを使っているけど、これが今、船で実際にマグロを釣っている道具。これでもう何尾も上げているけど。これが特殊な結び。これでバラシが格段に減った。

 *ここで、実際にその結び方の特長を実演しながら説明してもらった。とても合理的で、なるほど!って唸るしかないほどの結び方で、特許をとっても良いぐらいの優れた技術だと感心させられた。

これで掛けて、思いっきり合わせるでしょ、そうするとこれが伸びるから。これだけ距離が出ると完全に食い込むようになる。この距離が短いとテコの原理で、口が切れちゃう。これで61㎏も獲った。これじゃないと切れちゃうよみんな。重量感もあるし、すごい引きでしょ。

――これはご自分で考案されたんですか?

自分で考えた。何で、なんでバレるのか?トレブルのデッカイのを使ってもバレる。これは、船になってからはショックリーダーを使うようになったけど、通常は電車結び。船ならもうPEの8号もあれば大丈夫だから。60㎏でも100㎏でも獲れるから。

――磯でマグロをやっていた時は、ショックリーダーを使わずにPEを電車結びでやっていたんですか?

そう。

――どのぐらいの太さのものを使っていたんですか?

メインラインが6~8号で、その先が10~15号ぐらいだね。

――それは色付きのものですか?

色は黒のやつ。

――これはどこのメーカーのものですか?

これはダイニーマの、よつあみだな。ウルトラダイニーマだな。

――よつあみなんですね。

これはもう、このハリの結びだけは自信がある、こりゃあ。ワンタッチで。

 *ここでもう一度特長を実演して見せてもらう。

だから、向こう(本土の方)でマグロ釣りをやっているのを見ていると、最初から伸ばしてやっている。あれは絡むし色んなトラブルがあるから。とにかく喰わせてからの問題だと考えて。

――すごい工夫ですね、これは。これは公表していいんですか?

別にかまわないよ。

――えー。(笑)

だから、ルアーじゃない人はこれを見たら驚くんじゃないかなって思うよ。

――この結んである糸自体はどのくらいのものを使っているんですか?

これはPEの60号

――60号。PEの60号なんだ。へぇー。

これと出遭わなかったら、デカいのは獲れなかったね。

――どこからこの発想は生まれたんですか?

それは、バラしてバラしてバラして、どうにもバラしてさ。どうしようもないから、色々考えたわけさ。(笑)

*丸市コメント*
もう一度、この結びの特長を実演してもらった。魚を喰わせたときにルアーとハリの距離が短いと、ルアー自体がテコとして働いてしまい魚の口切れなどでバラシが多くなる。それを解決する方法として、合わせを入れると結んだ糸が伸びるという結びを生み出したことになる。ルアーとハリとの間に柔軟な糸が入ることによって、ルアーがテコになることを防ぎ、口切れや身切れを減らす。しかも、初めから伸びていると絡みが多くなり、トラブルのもとになってしまうので喰わせるまでは短く収まっているというわけだ。私のようなナマクラにはとても考え出すことができない優れ技だ。
この結びも公表しても構わないということだったので、僭越ながら私が仮に命名させてもらった。濱口さんの考案した結びだということと、伸縮する結びであるということで名付けて、濱口ノット=イラスティック・ノットとした。



――やっぱり、毎日のようにバラした原因を考えていなければ、こういう発想は生まれてこないですよね?(笑)

だから、数をよせら(たくさん)掛けて、よせらバラしているから。釣り上げた魚も沢山いるんだから。カアチャンがもう持ってくるなっていうぐらいだったから。(笑)

――以前、テレビでヒラマサのカゴ釣りを観たんですけど、そのときもハリを二本付けてバラシを軽減するっていう仕掛けに感心したことがありましたけど、この結びははるかにスゴイですね。

とにかく、デカいのを獲ろうと思ったらこれ以外には無理だよね。ガッポリ喰っていれば関係ないけど、ルアーがテコになるような喰い方だと魚の重量感と引きの強さでどうしてもバレるよね。

――そうかー!素晴らしいですね。それでは、話を進めますけど61㎏のマグロに到達するまでの濱口さんのルアー釣りの仕掛けの進化はどういう順番になるんでしょうか?

何でショックリーダーを使わなくなったかっていうと、陸(おか)からだとボチャンってルアーが落っこちたときにマグロって喰ってくるのよ。その時にショックリーダーを使うと最低でも150ポンドぐらいを使うようになっちゃうのね。そうすると、動きがなんていうのかな、変な動きになって自由に動かない感じで喰いこみが悪い気がして。それで、ショックリーダーを使わなくなったんだよね。それで、PE-PEでやるようになったんだよね。そうすると、格段に喰いこみが良くなって、でも今度は真っ向勝負になるから糸切れが始まって。弱いとこ、弱いとこへ行くんだよね。そういう感じで。これ(61㎏のマグロ)獲ったときは、8号-10号で。

――道糸が8号で、リーダー部分が10号っていうことですか?

そうだね。

――長さはどれぐらいとっていたんですか?

えーっとねぇ、どのくらいとっていたんだろう?確か、二ヒロぐらいだったんじゃないかな。あんまりよく覚えてないけど。

――それで、電車結びなんですか?

電車結び。あれで絶対切れないね。船でも使っているけど。

――それだけで、獲れちゃうんですね。(笑)

絶対今までそこから切れたことないもんね。

――そうですかー。はぁーっ。もうひとつ、最初はイシダイ竿で、そのうちGTロッドで、このマグロを獲ったときにはツナロッドとかだったんですか?

これをやるときには画期的な竿を見つけていたの。スズキ用の竿で、オシアの、シマノの。それがものすごく強いの。ヒラマサの10㎏を獲っても何しても、全くヘタレないの。それで、マグロもこれで狙って獲ったの。折れなかったの。

――その竿は、ルアーのキャパは何グラムぐらいの竿なんですか?

ラインが5号ぐらい。

――でも、8号と10号を使っているんですよね?(笑)

そうそうそう。でもガイドは変えているよ。飛んじゃうから。だから、デカいのを付けていた。

――ルアーは何gぐらいのを使っていたんですか?

だいたい、通常は50~100gぐらい。

――ルアーとリーダーとは直接結ぶんですか?

そこはこだわりがあって、直接結ぶ。フックとかは使わない。糸がよれる時もあるけど、PEだとそんなに問題はない。今までそれで不自由したことはないから。

――あと、ルアーを遠くに飛ばすコツみたいなものはあるんですか?

ある程度の重さがあれば、スピニングだから飛ぶんじゃないかな。それに、遠くに飛ばすのが目的じゃないから。マグロは遠くに飛ばすけど、ヒラマサ・カンパチ・ブリ系統は飛ばすことがメインじゃなくて、如何に誘うかってことだから。喰ってくるのも足下だしね。ワラサは少し遠目だけど、ヒラマサ・カンパチはホント波打ち際だから。デカければデカいほど。こいつ(17㎏のヒラマサ)だってそうだから。足下の1mぐらいのところで喰ってきているから。デカいのはほとんどそういう感じだね、ヒラマサ・カンパチは。ブリぐらいだね、遠目で喰ってくるのは。


――マグロはどうなんですか?

マグロはねぇ、飛ばせば飛ばすだけ良いっていう感じだね。


③頭だけで16㎏のマグロ

――この61㎏のマグロを獲る前に、頭だけ残ったっていうマグロもありましたよね?

あるある。これだよね。(写真を指差して)

――これはサメに喰われたんですよね?

サメ。サメ。

――この頭の部分だけで、どのぐらいの重さでしたっけ?

これで、15㎏だったかな?

――アっ、16㎏って書いてありますね。

16㎏か。

――すごい話ですよねぇー。(笑)

一発でサメに喰われちゃったからね。一発。もう、ストンって軽くなっちゃって。ストンって日本刀で斬られたみたいに。普通だったら噛み切るのに、グッ、グッてきそうじゃない。全然こない。手に何にもこない。

――これは結構やり取りをしていたんですか?

やり取りしていた。かなりしていた。これはねぇ、確かアジの生餌で喰わせたんだよな。確か。

――そうなんですか。それで、どっちが多かったんですか、ルアーと生餌の泳がせと?

ルアーの方が断然多かった。色々とやってみたけど、ダントツでルアーの方が喰う。

――最初にバラしたマグロに出遭ってから、この61㎏のマグロを獲るまでにどのくらいの期間が掛かっているんですか?

えーっとねぇ、どのくらい掛かったのかな?61㎏まで行くのには5年掛かっているけど、最初の目標だった20㎏オーバーまでは1年掛かってないよね。10㎏以下の小さいのはその前に結構釣っているし。それで、20㎏の次は30㎏狙うって。そうしたら今度はサメにやられたり。でも、シマアジより全然、時間掛かんないで釣れる。

――(写真を見ながら)そうするとこれとこれは同じ魚?

うーんと、一緒、いっしょ。あれ、違ったかな?!

――(笑)(笑)

忘れちゃったよ、いっぱい釣っているから。(笑)良かったら、参考にして持って行っていいですよ。

――はい。ありがとうございます。

このあと(61㎏のマグロを獲ったあと)船で、100㎏ぐらいまでいったけどね、船じゃどうってことない。船なら300㎏台ぐらい釣んなきゃなあー。

――船もルアーですか?

ルアーとサンマの引き縄と。両方で獲っている。船はねぇ、磯とは違う。拍子抜けするぐらい。技術は必要ない。道具だけ。

――そうかもしれないですね、この61㎏のマグロを獲ったときも、同じ場所でやり取りしたわけじゃないでしょう?絶対!

同じ場所にいて、

④釣り上げた直後の61㎏のマグロ

――ずーっと?

動けなかった!こいつは!

――アっ!動けなかった!?

こいつは動けなかった!(笑)いや、ちょっとは動いているよ。10mぐらいの範囲では動いているけど。あの、他のやつのときには赤岩のコンクリ場の方までいっちゃったり、回られていっちゃったり。でもこいつのときにはもうとってもじゃないけど、(笑)だって、こうやって竿持っていてケツが浮くんだよ、踏ん張っていてもケツが浮くんだからさ。それで、Tさんに肩押さえていて、肩押さえててってたのんで、肩押さえてもらってさぁー。(笑)

――そっかー。そういえば、ギネスに乗せるっていう話がありましたよね?

止めた!

――何で止めちゃったんですか?

英語で全部やんなくちゃいけなくって、代理人を立てたりして、とにかく簡単じゃないんだよね。イギリスに英語で電話して説明しなくちゃなんないらしくて、全部英語でってことで、(笑)そんじゃ止めたって(笑)代理人を立てるにしても、よせら(たくさん)金が掛かるらしくて。テレビで簡単にやっているけど、民間人じゃとっても無理だよね。

――どこか、メーカーさんが後ろ盾になってくれなかったんですか?

それには国際法上の問題が絡んでくるから、余計に難しくなってくるらしいんだよね。このマグロを陸(おか)から釣ったのは、どこの漁獲高になるかっていう問題になるらしくって、(笑)そうすると色んな法律上ややこしい話になるんだって。公にすると、とにかく色んな問題が絡んできちゃうみたいだね。だから、あんまり公になっていないみたいなんだよね。記録的には30㎏までしかないって、北海道の。

――陸ッぱりからでは?

そう、それも陸で喰わせて、船に乗って追っかけて獲ったみたいよ。(笑)そりゃ、どっちになるんだって話だよね。(笑)

――(笑)そんなことやっている暇があったんだっていう、ある意味すごいですね、それも。(笑)

これは、完全に磯で釣ったわけだから。

――でも、この61㎏のマグロも縦横無尽に行ったんじゃないですか?

こいつはねぇ、確かに行った!でもねぇ、素直だった!沖に走ったから。

――沖に走ったんですか!

横にも走ったけどね。

⑤運ぶ準備中

――どのくらい走ったんですか?

いや、全部出たよ。

――エッ!ラインが?

300いくつが、全部出た。6500GTが。全部出てもうダメだってグッて堪えたら、グーンとこっち向いてそこから必死に巻いて、それの繰り返し。3~4回そんなことやったかなぁ。

――時間はどのくらい掛かったっていっていましたっけ?

どうだろう?どのくらいだろう?でも、1時間も掛からなかったような気がするけど。

――何時頃ヒットしたんでしたっけ?

確か、10時か11時。真っ昼間。一瞬の出来事だからね。ルアーが着水した瞬間にトビが飛んで。それで、次にトビが着水する方向にめがけてルアーを投げたら海が爆発したみたいにドバーッと飛びついて来た。

――ハリは良いところに掛かっていたんですか?

こいつは飲んでいた。完全に飲んでいた。

――ルアーを飲んでいたんですか。

それで、最後は知っての通り泳いでロープをエラから口に通して引っ張り上げたんだよね。

⑥磯を運ばれていくマグロ

――エッ!泳いだんですか?もう下まで来ていて降りて行っただけじゃなくて?

下まで来て、もうどうしようもなんなくて、ギャフでも引っ掛けらんなくて肉が切れちゃって。それでしょうがない俺がロープ持って降りて行って泳いで、エラからロープを通して裏の池に引きずり込んで、3人がかりで。それで6人がかりで運んできたの。

――スゴイなぁー!そう、エラから通すんですよね、エラから。(笑)

こっち(口)から入れたら、

――大変なことになるんですよね。でも、当日に見せてもらったら、濱口さんの腕がすごいことになっていましたよね、ラインで。

もう、ラインで。出てくときに、出ていくときにねぇ、もう半端じゃないんだよ。

――でも、よく竿を抱きかかえるようにして踏ん張っていられましたよね。

普通にしていたら持って行かれちゃうからね。股の間に入れて抱きかかえて押さえていないと。

――でも、そうやって竿を押さえているとラインが出る時に擦れて熱いですよね?

うん、でもラインに触れっぱなしじゃないから。まぁ、最初に走られてラインが出たときにやられたんだとは思うけど、あと、巻いてくるときにもここ擦れるでしょ、だからもう腕がグローブだよね。(笑)

*丸市コメント*
マグロ釣りの話では、こう言っては失礼な話だが、濱口さんのクレバーな一面を見せつけられた気がした。常識や基本にとらわれることなく、様々な試行錯誤を繰り返して工夫を凝らしている。
まず驚かされたのは、ナイロンやフロロのショックリーダーではなく、PE-PEの結束で ショックリーダーの代わりとした点だ。この柔軟な発想には本当に驚かされた。おそらく、このことを今回初めて知らされる方々は、私と同様に驚くことだと思う。特に、ルアー釣りを楽しんでいる方々は。
いかにして、投げやすくて強くPEとショックリーダーを結束するか?そのことに苦心をされてきた先人たちの歴史をある程度知っている者としては、ある意味ではコペルニクス的転回といっても良いぐらいの話ではないかと思う。しかも、簡単な電車結びで大丈夫ということになれば、画期的ではないだろうか?
この方法で、実際に61㎏のマグロを釣り、しかもショックリーダーにPEラインを使っても魚の喰いが減るわけでもない。これこそが、型破りということだろう。
さらに、濱口ノットと仮に命名させてもらった結びだ。魚を喰わせるまでは短く収まり、合わせた瞬間に伸びることによってバラシを軽減するこの結びは、本当に合理的な結びだ。悔しい思いを繰り返した濱口さんの、目標のマグロを釣り上げるまではやまないあくなき探求心の賜物だ。
しかも、公開することをあっさりと承諾していただいたことも驚きだ。この結びは、原理を理解すれば誰でも使えるものだ。濱口さんの寛容な態度には敬服する以外にはない。
濱口さんが、次々と目標をクリアしてきた理由を、私はここに見つけた気がした。
しかし、陸ッぱりからマグロを狙うという釣りは、やはりかなり危険が伴う釣りであることは間違いがない。特に、相手が大きくなればなおさらだ。くれぐれもこのことは忘れずに、安全第一の釣りを楽しんでいただくようにお願いします。