春夏秋冬特別企画ロングインタビュー
島の釣り人に聞く!

濱口一人さん
-PartⅡ-

濱口さんは20歳~24歳ぐらいの3~4年の間、島から離れて都内で生活をしていたため、釣りのブランクが少しだけある。休みで島に帰ってくるときにはイシダイ釣りに出掛けていたようだが、毎日のように竿を出している濱口さんしか知らなかった私には、これだけのブランクがあったという話はとても意外な気がした。
釣りから離れるこの時間がなかったとしたら、濱口さんの釣り人生は今とはまた違っていたかもしれないなどと勝手に想像するだけで、ワクワクした気持ちになってしまうから不思議だ。


アカイカ釣りについて


---プロフィール---
濱口一人(はまぐちかずひと)さん

1957年大島生まれ。18歳頃から本格的に大島での磯釣を始める。イシダイ釣りを皮切りに、様々なターゲットに目標を定めクリアを果たしていく。磯からのルアー釣りで61㎏のクロマグロを釣り上げたことで知らないものはいないほどの大島屈指の釣り人である。
(株)濱口建設社長。現在の目標は船釣りで300㎏超のマグロを釣り上げること。
――24歳で東京から大島に戻って来てからは、イシダイ釣りのほかは何を狙うようになったんでしょうか?
そのうちにだんだん釣れる魚を狙い始めたよね。桟橋でその当時こんなデカいアカイカが釣れたりしていてね。

――いわゆるパラソル級ってやつですね。
そう、1杯で7~800gあるようなやつで、2杯掛かると上げられないってくらいのやつが、桟橋でザラに釣れた時期があって。それからソーダカツオの2㎏台のものがどこへ行っても釣れるって時期があって。それで、そういう釣りに少しハマってね。

――イシダイ釣りを止めたわけじゃなくて、同時並行でアカイカやソーダカツオを釣っていたんですか?
休みの日にはイシダイ釣りに行って、仕事終わりなんかにアカイカを釣るっていう感じだったかな。

――イカ釣りはどこでやっていたんですか?」
元町で。

――濱口さんの今の住まいからだと、近くのヨコブチなどでもアカイカ釣りが盛んだったって聞いたことがあるんですが。 それはこの辺りの人たちの話だね。自分は東京から戻って来てから元町に住んでいたから、元町の桟橋で釣っていたね。実家も仕事場もここだけど、30歳ぐらいまでは元町に
住んでいたからね。

――そうだったんですか。アカイカのパラソル級が元町の桟橋で当時は釣れていたんですか?
もう、晩飯でイカが食いたいからって、(笑)ちょっと行ってカッチャクリで釣れたんだよね。行けば釣れるっていう感じだから。(笑)

①丸市が釣ったアカイカなど

――カッチャクリでっていうのは、ウキ釣りじゃないっていうことですか?
そうそう、ただもう普通のイカヅノを5~6本つけて、下に錘があるのをただこうシャクッて釣るだけ。

――じゃ、船で釣るのと同じようなものですね?
それでもどんどん釣れちゃうんだから。

――それで釣れちゃうんですかぁー。はぁーっ。それじゃ、キビナゴなどを巻くんじゃなくても釣れたんですか?」
よっぽど喰いが渋って来るとキビナゴや身エサなどを巻いたり、色々とやるけども。

――船釣りで使うイカヅノで、桟橋の足元で釣れちゃうんですか、、、。はぁーっ。
それで釣ったのを配って歩くみたいな感じで。

――はぁーっ。
一晩で50~100㎏ぐらい釣れて、一晩といっても夕方から午後11時ぐらいまでで、そのうち配り歩くのも面倒くさくなってきて、市場に持って行ったの。そうしたら、㎏3000円ぐらいになって。一か月で60万円ぐらいになったときもあったよ。(笑)

②船で釣ったアカイカ

――本業より稼ぎがいいぐらい?(笑)
そうだね。まぁ、ずっとじゃないからね、一時だけだったけどね。(笑)

――そんな感じでアカイカが桟橋で釣れていたっていうのはいつぐらいまでの話なんでしょうか?
えーとね、4~5年は続いたね。それからだんだん釣れなくなったね。

――僕が島に来た当時はイカ釣りっていうと、年が明けて波浮の桟橋でヤリイカが束釣り(100杯)されたって声から始まって、だんだん北上していくって感じでしたね。途中からヤリイカからアカイカに変わって行って。でも、なかなか束釣りっていうこともなくなってきましたし、そもそも小さいですよね。
そうだね。ちょうどその頃(丸市が島に来た当時)までは、ヤリイカはまだ束釣りできたね。赤岩でシマアジを狙っていた頃だけど、ウキ釣りで竿2本出して釣ったことがあるな。でも、ウキ釣りをするようになったってことは、釣れなくなってきたってことだよな。


*丸市コメント*
イシダイに続いて、衝撃的なお話でした。アカイカが桟橋の足下で、しかもパラソル級のものがカッチャクリで釣れたなんて言う話は。最近では、パラソル級なんて滅多に釣れることはなく、釣れたとしても子供用のパラソルぐらいで、しかも数もそんなに釣れることもなくなっているというのに。羨ましい限りのお話です。

ソーダカツオ釣りについて

――それでは、ソーダガツオはどのような仕掛けで釣っていたんでしょうか?
それはサビキで。丸市の先代が作っていたサビキをいつも買って。自分でなかなか作るのは仕事があってできなかったからね。先代は得意だったよね。

――そうですね。バケ作りは好きでしたね。それで、ソーダ釣りはやっぱり暑くなるような時期に釣ったっていうことですか?
そうだね。やっぱり春から夏にかけて秋口ぐらいまでかな。

――僕が島に来てからも、夏にはソーダカツオしか釣れないなんてことが何年かありましたけど、最近はソーダカツオすら釣れなくなりましたよね。
ソーダいない。いない。

――何でですかね?ソーダすらいなくなっちゃうっていうのは。
いくら潮のせいだって言ってもね、黒潮が離れちゃったからって言ってもね。ソーダも釣れないっていうのはね。昔はソーダはシマアジの外道でね、シマアジ狙っていてソーダが喰っちゃってどうしようもないぐらいだったんだけどね。(笑)

――ソーダはだいたい桟橋で釣っていたんですか?
そうだね。元町でやったり岡田とかでやったり、桟橋で釣ることが多かったよね。

*丸市コメント*
ソーダカツオも釣れなくなってきたっていう現実を思い出して、少し悲しくなってきました。(笑)子どもから年寄りまで、スキップバニーを使ってソーダカツオを釣るっていうのは、私が島に来てからは夏の桟橋での風物詩だったというのに。記憶をたどっていくと、数年前に本カツオとソーダカツオが数多く釣れたのを最後に、ソーダカツオが釣れなくなった気がします。
ある年は、カゴ釣りだろうとルアー釣りだろうと、何をやってもソーダしか釣れないっていう年があったくらいなのに、、、。あの時に、散々外道扱いをしたから、ひょっとしたら怒ってしまったのではないか?!などと、愚にもつかないことを考えてしまいます。


メジナ釣りについて

――その間にもメジナ釣りはやらなかったんですか?
メジナもやっていたけど、そんなにハマんなかった。やってはいたんだけどね。

――当時のメジナ釣りのコマセは、イワシのミンチですか?
イワシ、イワシ。イワシのミンチで、付けエサはあれは何の魚だったかな、魚のはらわたを付けエサにしたんだよね。オキアミじゃなくて。コハダかな?ビン詰になっていたのがあったんだよね。

――へぇー、そうなんですか。へぇー。
うん。それで、丸いウキで櫛の歯が出ているやつをゴムで止めて。ハリスはだいたい5号ぐらいで。サラシが出ている日に釣りに行ってイワシのミンチを撒いて。付けエサは魚のはらわたを使って。

――そうした付けエサがどこかで売っていたんですか?
いやいや、付けエサは知り合いから送ってもらって。全磯連に入っていた関係で、そうしたエサを集めていた人がいたから送ってもらっていたんだよね。それが一番喰ったね。

③63㎝3.75㎏のメジナの魚拓およそ40年前に元町桟橋での釣果

――イワシのミンチをコマセとして撒いて、付けエサは魚のはらわたっていうのが当時は一般的な釣り方だったんですか?
一般的っていうより、ちょっと隠れ技だったけどね。(笑)

――隠れ技ですか。(笑)そうすると一般的な付けエサは?
あとはイワシを団子巻きにして、シマアジをやるみたいに。一般的な付けエサっていうと、やっぱりイワシだったと思うよ。

――そうすると、イワシのミンチをコマセとして、イワシを付けエサとして使うっていうのがその当時の釣り方っていうことですか?
ちょうどオキアミに切り替わる時期だったね。

――そのオキアミに切り替わる時期っていうのは、いつ頃のことだったんでしょうか?
だから、どのくらいだろう?オキアミはダメだダメだっていわれていて、大っぴらに使えなかったんだよね。昔は。

――そのダメだっていう理由は何だったんですか?
要するに磯枯れするっていう話で。だから、ちょうど俺が20歳~24歳ぐらいのその頃が入れ替わりの時期だったんじゃないかな?

――そういった、オキアミは磯枯れするっていうような話っていうのは当時からあったんですか?
あった、あった。昔は。昔の方が。だからあんまりオキアミは使わなかったんだよね。

――実際のところ、どうなんでしょうね?本当に磯枯れするんでしょうか?
するっていう話だったよね。それで他の島は磯枯れしちゃって、魚が寄り付かなくなるっていう話だったよね。だけど、実際そういうことがあるのか俺には分からないけど。

――今、メジナ釣りのメッカになっている四国では、シーズンには毎日のように渡船で釣り人が岩礁に渡ってオキアミを何トンという単位で撒いているらしいけど、磯枯れするどころかメジナが養殖状態になっていて60㎝を超えるメジナがウジャウジャいるっていう話ですから、オキアミで磯枯れするっていうことはないと思うんですけどね。
昔は変にそういうことを言う人がいたんだよね。全磯連関係で使っちゃダメとかね。そういうことが一時期あったね。でも、24歳を過ぎた頃には聞かなくなったな。

――僕はオキアミは南極でしか取れないって思っていたんですけど、最近見たテレビや漫画で日本近海にもいて魚が食べているっていうことを知って驚きました。(笑)
アミは聞くけどオキアミってあんまり聞かないけどね。

――そうですよね。だから僕は魚にとってアミはソウルフード=和食で、オキアミはいわば洋食みたいなものじゃないかってホームページに載せちゃっているんですよね。どうもそうとばかり言えないってなってきて、(笑)まぁ、はっきりはしないんですけどね。 話を元に戻しますが、メジナを釣るコツはイワシのミンチとコハダのはらわたを付けエサにして釣るっていうことですよね。
うん。あとはサラシだね。サラシは今でも基本だけどね。

――それで、釣れたのはオナガがメインだったということですね。
そう、釣れたね。だからあんまり相手にしない。あんまり相手にはしなかったね、メジナは。行けば釣れるっていう感覚で。

――釣れすぎると、やっぱり面白くないですからね。釣り人のわがままですけど。
今の人の釣り方見ていると、あまりにも繊細過ぎているような気がするけど。

――なるほど。じゃ、ハリなんかもかなりデカいのを使っていたんですよね?
デカいデカい。だいたい12号ぐらいのやつ。

――メジナ用のハリで二桁号数の大きさっていうことですね。
全然関係ない、ハリの大きさなんて。

――今のハリはこんなに小さいですもんね。(笑)
ハリなんか全然。今でも俺はハリは気にしないけどね、どんな釣りでも。ハリの大きさはデカいのを、基本的にデカいのを使うけどね。
*丸市コメント*
大島のメジナはクチブトがメインっていうような感覚でとらえていましたが、それは私のようにキャリアが浅い人間のイメージのようでした。濱口さんがメジナをやっていた当時は、メインはオナガだったということを聞いてこれも驚きでした。良く聞いてみないと分からないものです。
メジナは雑食性の魚だということは知っていましたが、私のように釣りを始めたときから付けエサ=オキアミということでしたから、他のエサを試してみるということは正直あまりありませんでした。イカの短冊や塩辛をエサにしたことはありますが、それ以外の付けエサを試したことはありません。
昔は、船虫で釣ったとかという話は聞いたことはありましたが、魚のはらわたが一番喰いが良かったという話は興味がわく話でした。
ちなみに、イカをエサにするのはメジナ釣りだけではなく、結構有効だと思っています。